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 今のところ艦これ日記が中心です。先輩提督の皆様のイベントや深部海域攻略アドバイスに深い感謝をしつつ。
 「艦これ変想」は、艦これを題材にした二次創作です。ご笑納ください。
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遠いどこかの港で 幕間2:小正月(01/17加筆修正)

 「けんけんぱっぱ、けんぱっぱ、と、……とととととととっ!」文月が最後の一歩で左右にふらふらゆれる。が、「とおっ! ちゃくち、せいこうー」
 「あ~あ、おしい」
 望月のかったるそうな声がする。
 「えへへっ」文月は木の棒で地面に印をつける「次は皐月ちゃんのばんだよ!」

 母港は常に晴れ。
 自分は、睦月型達が官舎前の運動場でケンパをしているのを執務室の窓から見降ろしていた。
 遠距離遠征の為に常にキラ付き状態を維持させている睦月型や暁型は通常の出撃には出さない。出撃に出すと疲労が溜まりキラが剥がれてしまうためだ。無論遠征でも疲労するので、数回遠征が終わる度、1-1キラ付けに出撃させる程度である。そのため、遠征に行っている以外のちびちゃん達は殆ど留守番であり、大抵はこうやって身体を動かす遊びをさせている。気を紛らわせるという目的もあるが、子供の遊びの中には身体能力や集中力を高めたり、チームワークなどを学ぶものも少なくない。例えステータスというものがあっても、幸運値もあることだし、きっとこういう遊びを通じて彼女達が何か学ぶのではと自分は期待したいのだ。ケンパの隣では、髪を揺らし、踊るような足捌きで陽炎が歌いながらゴム跳びをやっている。陽炎型の3人も今は長距離遠征待機組だ。特例である雪風を除いた陽炎型のスペックは悪くないのだが、白露型の夕立や時雨のように改二になってステータスが大化けしない限り、出撃させる理由が見つからない為こういう運用をしているというのが正直な所である。

 運用と言えば……必要最低限の彼女達しか保持運用しない方針を持っている提督もいるし、自分のように史実を踏まえたり、好奇心から、仕様の最大値である170人まで宿舎を拡大して余裕を持たせた運用をする提督、コンプリートを目指す提督も居る。どれが正解だとは思わない。仮想世界の楽しみ方は人それぞれだからだ。
 「艦隊のアイドル」那珂の改二のように急に「出世」が決まった今回なら、コンプリート型の提督なら直ぐに改二改造が可能だろうし、最低限運用系の提督だと、情報を確認して必要だと感じたら彼女との出会いを求めると予想する。
 ちなみに、自分の母港にいる那珂に、モニターを使って既に改二になった他の母港の那珂の姿を見せ、育成艦認定の辞令を出すと執務室の中を飛び回って喜び大変だった。一緒にやってきた神通と川内も我が事のように喜ぶ。
 「那珂ちゃん、すんごくパワーアアァーーーーーーップ! みんなありがとーーーーー!」
 「よかったわね、那珂さん」
 「私もきっと、スポットライトを浴びる時が来るわ!」
 川内がグッと拳を握り、自分を力強い目で見つめる。彼女に初めて出会うまでは彼女の話で頭が一杯だったのだが、落ち着いた今、川内型3人全員が通常遠征の旗艦か待機指示のみだった。とはいえ、川内型には個人的に気になる史実ポイントがある。那珂が改二になったのは現実世界のとある出来事がきっかけというが、南雲司令官など、彼女に乗務した人物の知名度等、彼女の史実も改二選出において重要なファクターだったのではと自分は考えている。だから残りの二人が那珂とお揃いの衣装を着る日も遠くないのではとうっすら感じている。史実的に見て神通が先だと思っていたのだが……まあ、この仮想世界に関する現実世界の反響は大きすぎて自分は情報を全て追いかけることが出来ないから予想出来なくても仕方が無い。
 
 那珂のような例外を除き、現在、自分の母港の育成方針は重巡を中心としたものになっている。秋の大海戦で重巡の重要性をこれでもかと認識させられたということもあるが、通常海域は大抵昼に会戦開始であり、オリョール(2-3)に出撃することが殆どである自分の艦隊にとっては、重巡中心の構成が安定していると感じている。確かに、火力で言えば戦艦がトップだが、戦艦数隻を入れただけで運用コストは一気に重くなる。特に中破・大破時の治療に使う油と鋼の数量が厳しい。だから演習のみの育成になってしまうのだ。そのため、自分は、育成艦を旗艦にし、重巡か航巡を3人、潜水艦を1人、空母1人という構成を基本にしている。それを3パターン作成し、もうひとつ潜水艦のみの編成の4パターンでオリョールを周り、第2海域を中心としたデイリー任務課題をクリアしていくのが日課である。潜水艦撃破課題の時のみ、五十鈴改二を中心とした対潜水艦軽巡4人と伊勢か日向、そして空母1人の構成で4-3に出撃する。
 4パターンにすると、一巡すれば大抵疲労は抜けているのでスムーズに出撃させることが可能だ。勿論、自分自身の疲労があるので、イベント時のようにぶっ続けでやることはない。現実世界にいる時間の方が多いのが普通だし、仮想世界にいてもキリキリ働かないのが信条である。そのため、大抵、潜水艦撃破課題が終われば第一艦隊チームには官舎待機を命じ、遠征部隊にのみ指示を出すことが多い。

 今現在、羽黒が改に向けて最後の追い込みに入っており、彼女が改になれば自分の母港に所属している重巡全てが改となる。トップは摩耶が勤め、次に先任である那智、そして利根と筑摩の姉妹が続く。ステータスの良い愛宕高雄も順調に成長している。航巡は、鈴谷と最上がツートップを勤め、遅れて着任した三隈と熊野が二人に追いつこうと頑張っている。
 戦艦は、金剛型は勿論の事、陸奥と武蔵も十分育ってきているし、懸案だったミッドウェー海戦に関係する正規空母4人の育成も目標まで近づいてきた。次の大海戦がいつ、どういったものになるかは分からないが、秋の大海戦の時よりかは落ち着いて取り組めるだろうと思っている。

 今日は疲れていることもあってどうするか悩んだが、結局、開発や演習などの課題クリアと遠征指示だけだす、いわゆる全休日としてログインすることにした。だから、彼女達だけでなく自分ものんびりしているという訳である。
 「提督ぅ~~!」
 ノックもなしにいきなり扉が開いた。
 「ちょっとぉ、たまには手伝ってくんなきゃ困るんだけどさぁ~」
 寝癖なのかそれで普通なのか良く分からない髪型の隼鷹が、腕を振って「来い来い」の仕草をする。
 「それと、烈風とか流星改とかもっと配備してくんないと」
 「自分の引き運が悪いのはこの母港の名物だと思ってるんだが」
 「そんなこたぁ名物にしなくていいよ! っとにも、早く早く」隼鷹はどかどか部屋に入ってきて自分の腕を無理矢理掴んだ「皆待ってるんだから」
 隼鷹が傍に来たとき、ぷーんと何かのにおいがした。このにおいは……
 「おい、隼鷹、また飲んでるのか?」
 「ええぇ? の、飲んでなんかないよぉ。シラフだよぉ」
 「思いっきり、におうぞ?」
 「……小正月ってことで、間宮さんが酒粕汁を振る舞ってくれて」
 「酒粕汁じゃなくて、材料の酒粕をちょろまかして焼いてバカ食いしたんじゃないのか?」
 「いーっていーって! ああいう作業するときゃ、景気づけしなきゃ! さ、いくよっ!」
 彼女と飛鷹の性格は那智の「真逆」と言っても良い。元は商船だったせいか、気さくでノリが良すぎる位だ。そして、今の話のように、度々間宮食堂で「盛大な一杯」をやっている姿を見かける。だが、そんな彼女を那智は飲み負かしたと青葉に聞いた。人と同様、彼女達にも意外な一面というのがあるのだろうとこの頃思う。

 自分の思惑は当たった。資源倉庫横にある小さな小屋に入ると、コンクリの床に置いた小ぶりの七輪で千歳が酒粕をあぶっていた。だから、小屋の窓が開いていた訳である。
 小屋の中には木の机と、畳が敷いてある小上がりスペースがあり、入り口直ぐ横には資源倉庫のボーキサイトから作られたアルミ片、アルミ粒などアルミ関係部品や、和紙、竹軸、羽、木材などが入った棚がある。赤城や加賀達は畳の方に、千歳姉妹以外の軽空母達は机を囲んでいた。
 「あら、提督も?」
 千歳が焼き上がった酒粕を載せた小皿を自分に差し出す。自分はそれに手を出さず、
 「作業なのか、女正月をしたいのかどちらなんだ?」
 「うふふ、いいじゃないですか」
 女正月とは、男達が飲んで食べて騒ぎまくる正月に忙しく立ち回らねばならない女達が、やっとひと息できる一月半ばに集まってこっそり息抜きし、少しでも正月気分を味わおうという風習だ。地方によって様々な行事があると聞く。
 「すまないが、自分は酒粕が苦手でね。皆で楽しんでくれ。さて……」
 「さあ、提督、作業続行よ!」
 逃げようとした自分の腰に飛鷹が飛びつく。仕方ない。

 艦載機も装備ブロックになっており、攻撃時に装備スロット毎に設定された数、空母から飛び立つ。例えば、加賀の3スロット目に装備された艦載機は46機出撃可能だ。だが、装備ブロックさえあれば良いというものではなく、ボーキサイトから精製したアルミを材料として艦載機の「魂」を作り、出撃時に油や弾と一緒にそれも持って行かなくてはならない。その艦載機の「魂」は、空母と軽空母が待機時にそれぞれの「得物」に合わせて作っている。
 正規空母たちの持つ「魂」は弓道の矢だ。現実世界では非常に手が掛かる作業だが、仮想空間なので工程は簡略化されている。基本的には竹軸に羽とアルミ矢尻を装着するだけだ。接敵時には二本つがえで美事な射姿を見せてくれる。放たれた矢は瞬時にスロット規定数分の艦載機の姿に変身し、敵に襲いかかる。
 軽空母は型式によって異なる。鳳翔や祥鳳、瑞鳳は正規空母と変わらないが、千代田はバルサ材をつかって艦載機っぽい形に組み立てた模型にアルミ粒を埋め込み「魂」とする。カラクリ細工の木箱にそれを納め、接敵すると木箱を操作し、中から艦載機を次々と呼び出す。龍驤や飛鷹と隼鷹はアルミ箔を挟んだ和紙を切って、艦載機をデフォルメした「形代(かたしろ)」を作り、それを宙に放つ。
 自分は和紙の間にアルミ泊を挟む作業に取り組まされた。ハガキ大の和紙に霧吹きにはいった糊を吹き付け、中心に針で何かの模様が彫り込まれた切手大のアルミ泊を挟む。それを何枚か作っては、押し寿司を作るときに使う箱のようなものにいれ、しっかり接着する。そうやって出来たものを3人の娘がワイワイしゃべりながらハサミで艦載機の形に切り抜いていく訳だ。仮想空間なのになんでこんなにちまちました作業なのだろうかと思うのだが、仮想空間でも「思いを込める」など、気持ちを大事にすることは既に書いた通りである。
 「ちまい作業は面倒やけど、気持ちよぉ飛んでってくれるとええ感じや~」
 「角が甘いと撃墜されやすいのよね」
 飛鷹は、切り抜いた形代と見本の木型を見比べた後、おおぶりのハサミで器用に形代のエッジを整えた。
 「それよりやっぱ、うちらにもがっつりホロレア配当してくんなきゃねー……っと、千歳~っ、おかわりちょーだいっ!」
 作業よりも、焼き上がった酒粕をつまんでいる時間が長い隼鷹は、千歳に空になった小皿を差し出した。三温糖を軽く振った酒粕が二きれ、小皿に載せられる。
 加賀は黙々と作業し、時折、仕上がった矢を掲げてはソリがないか、羽の具合はどうかとじっと見ている。赤城はボーキ……ではなく、好物の乾パンを2つ口に放り込み、頬に手を当てて幸せそうだ。飛龍は、蒼龍の髪留めを直してやっている。二人も酒粕を食べたせいか、頬がほんのり紅く染まっている。

 「翔鶴、大丈夫か?」
 手が止まっていた彼女に声を掛けた。
 「……あ、すみません提督」
 結局、先の「霧の艦隊」イベント海戦では彼女の妹を救い出すことは出来なかった。霧の艦隊の3人も去り際にその事を残念に思うと言い残している。確かに、遭遇率の低い熊野や瑞鳳を救い出すことは出来たが、やはり妹に再会させてあげたかったという気持ちは強い。
 「お正月、提督も現実世界では何かなさったのですか?」
 「ああ……いや、特に何も」胸によぎる事があるが、彼女達には話すまい「現実の自分は、ゆったりとした生活だし、ここに来れば出撃の合間に、皆と四季折々の楽しみを共有出来る。それで十分だ」
 「提督がそうおっしゃって下さるならとても嬉しいです」
 待てば海路の日和あり、という言葉が頭をよぎった。いつか、いつか願いを叶えてあげたい。他の姉妹達が再会した時のような喜びを彼女にも味わって欲しいからだ。
 
 「千歳お姉、それは食べる連中に任せちゃって、一緒にやろうよぉ」
 「こらこら千代田、危ないじゃない」
 千代田が姉の千歳にべったりくっついた。着任した時は、姉の事を思いやるちょっと頼りなさそうな妹位にしか感じなかったのだが、この3ヶ月強で「色々な所」が成長し、軽空母の中では最もレベルが高い。また、軽空母の中で唯一高速でステータスも良いので、海図攻略時に軽空母がルートに関わるケースでは彼女の出番となる。姉の千歳の育成はまだまだこれからだが、将来的に水母2人を核とした遠征に行ってもらいたいため、もう一人の千代田とともに軽空母に改造せずにいる。そういう事で艦載機用の「魂」を作る必要がないのと、酒がからむと何かと出番となる縁があるせいか、彼女が酒粕焼きの当番になったようである。

 「提督みーっけ!」半分ほど引き戸が開いて、黒いうさ耳みたいなものがチラリ見えて直ぐに消えた。島風だ「みんなー! こっちにいるよー!」
 彼女から逃れることは出来ない。神出鬼没と言っても良い。何度も知らない間に背後に回られて驚かされた。心臓が止まりそうになるから止めてくれと何度も言ってるのだが、いたずらっ子は直ぐに消えてしまう。

 席を立って外に出ると、長時間遠征から戻ってきた天龍達がこちらに向かってくる。モニターを見ると、今回も大成功。しかもバケツ2つも付いてきた。
 「霧の艦隊」イベント終了後、かなり減ってしまった資源は順調に貯まっており、鋼とボーキは提督着任以来最大備蓄量になっている。が、まだ大型建造はしない方がいいだろうと考えている。2月に次の海戦イベントがあるのではという話が他の提督達の間で噂になっているためだ。霧島の口癖、備えあれば憂いなし、ということである。

 (新たな戦力を生み出すために右往左往するよりも、既存の戦力をしっかり、平均的に伸ばす方が自分の性に合っているしな)

 秋の大海戦で見た深海棲艦の「姫」の言葉。そしてこの前の「霧の艦隊」のコンゴウを撃沈した時に彼女が残した言葉。次に出会う「姫」は自分にどんな言葉を投げかけるのか。その言葉を聞くためには強くならねばならぬ。後ろ手で扉を閉め、自分は前に向かって歩き出した。

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 艦載機について自分なりに思った事を書きたかったのと、普段、母港で待機してる艦娘達の日常を前振りとして書き始めたのですが、思ったより長くなってしまったので幕間にしました。
 隼鷹の酒ネタは絶対書きたかった事の一つで、それもクリアできて嬉しいです。
 この季節、自分には悲しい出来事があり、それゆえ、正月は具合が悪いことが多いのですが…… もし、こんな感じで仮想世界に飛び込んで気が紛れる出来事を体験できるなら嬉しいなという気持ちも反映してます。

 

 1/17:ちょっと手直ししようかなと思ったら、かなり加筆修正になってしまいました。どうしようか悩みましたが、加筆修正版を再度アップすることにしました。ますます長く……そして、どこへ行くんだろう、この話。