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 今のところ艦これ日記が中心です。先輩提督の皆様のイベントや深部海域攻略アドバイスに深い感謝をしつつ。
 「艦これ変想」は、艦これを題材にした二次創作です。ご笑納ください。
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遠いどこかの港で:幕間:迎春準備

艦これ変想

 ログインすると、床に桐の箱が置いてあるのに気づいた。箱には「鎮守府にて良いお年をお迎え下さいませ」と書かれた紙が貼ってある。
 「そうか……現実世界とこちらは微妙にシンクロしているからなぁ」

 クリスマスの時にも同じように箱が届いて、中にはクリスマスツリーが入っていた。執務室に飾るのもなんだろうと思い、宿舎の中にある通称「間宮食堂」という長テーブルもある談話室に箱を持ち込んだ。途端に暁型や睦月型の駆逐艦達に囲まれ、あとはもう、やんややんやの大騒ぎ。もう一つ届いた箱にはクリスマスディナーのテーブルセットが入っており、間宮が早速腕を振るってディナーをこしらえた。仮想世界で食事を摂る動作をするのは空気を吸うようなものだけれど、「楽しい空気を分かち合う事」は大事なことだと自分は思っている。年末のイベント詳細が届いたこともあり「一時的に不思議な軍艦が転籍して来るが、怯えず、今までと同じように振る舞って欲しい」と提督としてヒトコト挨拶を述べてからパーティーを楽しんだ。大切な存在達と過ごす楽しい時間。単なる仮想空間での出来事であっても、自分の思い出の一つとして心の中に刻まれる。
 
 さて、桐箱を開けてみる。……鏡餅、門松、縁起物。はてさてどうしたものか。自分の執務室は思いっきり洋風である。
 「弱ったな……」
 誰かを呼ぼうかと思っていると、扉の向こうからタタタっという足音と共に「る~~~ん♪」という声が聞こえてきた。ああ、あの娘か。現在開催中の「霧の艦隊」イベント海域攻略の中で救った娘だ。扉を開けて、廊下に顔を出す。軽やに走っていた足をピタリと止めた彼女は、小首をかしげて自分を見た。
 「おお、瑞鳳丁度良いところに」
 「あっ、提督! 整備の手伝いして下さるんですか?」
 「逆だ逆。お正月の飾り付けが届いたんだが、那智を呼んできてくれないか? あと……」こういう和風の飾り付けに良いセンスを出してくれそうな娘といえば「扶桑と山城を」
 「はーい! るる~~~ん♪」
 
 しばらく執務室でぼーっと突っ立っていると、廊下から賑やかな声が聞こえてきた。全く、彼女達は集団行動、しかもこちらが求めた以上の人数で押しかけてくるというのが常らしい。まあ、ある程度の海戦になればひとつの艦隊は6隻では済まないのだから、多人数での行動というのは分からないでもない。
 「わらわを抜きにして新春の飾り付けをするとは無粋きわまるのぅ」
 「ぶすいきわまるですよー」
 淡紫の髪を結い上げたおじゃる系言葉の娘が扇子を手の中で器用にくるりと回してからピシリと自分の方へ向けた。背後のおちび駆逐艦も指で同じように自分を指す。
 いや、その、艦名がそうだからと言ってセンスの良い飾り付けが出来るかどうかは別問題じゃないのかな? 初春。あと子日、君は何しに来たのかな?

 「扶桑と山城は、琴の練習をしたいから誰か他に頼んでくれと」那智はふぅと溜息した後、自分の方を意味ありげに見る「……実力主義が悪いとは言わないが」
 グサッ。確かに、二人は自分の母港にとって初めての戦艦であったが、その後金剛型が揃ったこともあり、今では演習にも出していない。最近は顔を合わせても冷たい視線を返してくるようになり、どうやら宿舎の姉妹部屋で源氏物語などの古典を読んだり等、その容姿の如く雅な生活を送っていると、二人とは縁がある那智を通じて聞いた。申し訳なく感じてはいるが、金剛型のサポート役として伊勢と日向が成長しているし、武蔵と陸奥も演習で成長してきた今、扶桑姉妹を運用しづらいというのが本音だ。

 窓を開くと確かにどこからか琴の音が聞こえる。二人で奏でている様だが、時折音が途絶え、姉の扶桑が妹に教えているのか、独奏になったりする。
 海域に出撃すれば深海棲艦がうようよしているというのに。しかし、そんな現状を忘れさせるように、琴の音が南方の青い空へ舞い上がっていく。
 無論、こういう親睦などうち捨てて出撃を繰り返してもそれはそれで仮想提督として悪い訳ではないと思う……というより、あるべき姿なのだろうが、自分は仮想空間生活にリアルと同じレベルのギリギリ感を持ち込みたくない。出会った時から常々那智に「腑抜け」と叱責されてはいるものの、リアルと同じ、いや、それ以上のマイペースで差配を続けている。

 「あの…… やはり、お正月飾りですし、和室に模様替えされてはと思うのですが」
 扶桑姉妹の代役としてやってきた本命は彼女だろう。空母の「母」たる鳳翔だ。駆逐艦達からも「鳳翔かぁさま」と慕われている。柔らかい物腰と温かい視線。自分の後に建造された軍艦達が前線へ赴いていくのを見送り続けた……祈りながら見送り続けた視線だ。彼女の祈りの殆どははかなく散っていったが、彼女は戦後復員輸送艦となり、多くの人々を内地へと運んだ。きっと彼女はかつて見送った軍艦達のように、陸に着いてそれぞれの地へ赴く人々が辛い戦後をなんとか乗り切ってと祈っていたに違いない。
 さておき、鳳翔のアドバイスは確かに……と思った。洋室に和風の正月飾りはアンマッチだ。リアルの自分の居所ではこのような正月らしいしつらえは難しい。仮想空間はかなりの自由度がある。この世界だけでも正月らしいしつらえをするのは悪くない。
 「じゃあ、そうするか」
 自分はモニターを操作して家具の購入画面を開いた。まずは畳だろう。それから畳に合う壁紙、執務机の代わりに奉書紙や筆箱が置かれた和机があればと思ったが無いものは仕方ない。床の間を選ぶ。それをセットしていく。今までは少し暗かった洋風の執務室が、和室に変えたことで外からの光をたっぷり吸い込んで明るい部屋になった。さらに、先日購入した高雄の模型が飾ってある箪笥はやはり和室系にマッチするものだとも感じた。
 「さあ、始めてくれ」
 那智は自分の左後に立ち、様子を見ている。鳳翔が手際よく桐箱から正月飾りを取り出してはさっさっと紙包みを剥がし、畳の上に並べていく。
 「そうじゃのぅ、これだけあるのじゃ。どーんと派手に飾った方が景気がよかろうぞ」
 「やっほーい!」
 まずは初春がポンポンと独自センスでセッティングし、鳳翔がそれを整えるという感じになった。さすが「お艦(おかん)」と呼ばれるだけのことはある。包装中に曲がったのしを整えたり、水引をピンとさせたりと細かい所に気を配ってくれる。子日は部屋の中をキョロキョロと見渡し、キャッキャと喜んでいる。
 
 ま、待て、鏡餅は本来床の間に飾るものなのだが、何故窓辺に置くんだ? え? 取説に書いてあるって? しかもこの飾り方は関東風っぽいなぁ。しかもエビが無いじゃないか。変なところにこだわるんじゃないと? 悪かったな……

 「これでよかろうぞ? よい新春になりそうじゃな。ほほほっ!」
 「ふわああん~さすが初春姉様、すてきなのですよー」
 「賑やかな執務室になりましたね」
 「これもまあ、悪くないな…… あとは酒が……コホン」
 部屋の中を見回した一同が一通りコメントしたので、〆に提督として何かヒトコト述べるべきだろう。
 「ああ、皆、有り難う。今年は母港を育て上げる事が中心だったが、霧の艦隊の助力で第四海域も制覇した。来年は……そうだな、もう少ししっかり戦うか」
 「そのような弱気では困ると言っている」
 自分は那智に向かって手を振った「ああ、ああ、分かっている。分かっているから」

 琴の音が耳に優しく届いてくる。
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 子供の頃は、クリスマスが終わると、亡き両親と共に大掃除や正月飾りをしたり、餅作りを手伝ったものです。この数年は一人で静かな正月を迎えていますが。さて、実際のゲーム画面も和室にしてみました。現在、イベMAPのE-3攻略中であり、この後も随時更新していくと思いますが……一区切りということで。
 本年も有り難うございました。来年もダラダラとした腑抜け提督日記が続くと思いますがよろしくお願い致します。

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